011068 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

ヒナコの伝言板。

ヒナコの伝言板。

Vol.1

            「FAKE」

「ハルー、またGLOW?」

遼が次の曲を入れようとリモコンのボタンを押すと隣に座っている慶介がうんざりした表情でいった。

「だって他にレパートリーないもん。」
「うそつけ?昨日夜、ウタダ練習してたじゃん。」
「あー!!ひど!慶ちゃん聞き耳立ててたなー?」
「聞き耳なんて立てなくたって聞こえるよ。あんなおっきな声で歌ってちゃ。」

村上慶介(むらかみけいすけ)は有名美容室で修行中の雪野遼(ゆきのはるか)の幼馴染みだ。高3の遼の3つ年上の慶介はいつも遼の相談に乗ってくれる。今日も仕事が休みで遼をカラオケに誘ってくれたのだ。

「あれはただ歌ってみただけだもん。この声じゃ、女の子の歌は無理です!」
「ためしに歌ってみればいいじゃん。いまどきハスキーボイスなんてかっこいいとおもうよ?」

遼は低い声がコンプレックスである。慶介が遼のコンプレクスを克服させようとカラオケに誘ってくれることはわかっている。自分の声を気にして友達ともなかなかカラオケに行かない遼だが、こうして慶介につれてきてもらだけで十分満足してるのだった。

「いいの!さて新曲歌うよ~!!今日はのどが枯れるまで歌いまくるからね~!!」

リズム感のある曲につられ遼はハイテンションになってイスの上に立ち上がった。いい気分でサビを歌っているその瞬間、突然勢いよく部屋のドアが開けられる、遼はびっくりして立ち尽くした。

「あの!お願いが・・・あれ?女・・の子??」

ドアの外には二人の男が立っていた。
ふとわれに返った遼はあわててイスの上で正座をする。

「あのー・・・何か用ですか?」

慶介が聞くと2人はあわてて顔を見合わせ、黒髪の男が思い切ったように話し出した。

「実はオレ達バンド組もうと思ってて今メンバー探してる最中で・・・。」
「そう!そしたらこの部屋から理想的な声が聞こえたからスカウトしようと思ってきたんだけど・・・。」

後ろから金髪の長髪男が付け足す。

「でも女の子だよ?どうする?」
「別にいいんじゃない?女の子ってのもありだよ!」
「女の子のビジュアル系か~、とにかくイメージにぴったりなんだよね。君の声が。一緒にやろうよ!」
「へ!?あたしがですか??」

いきなりすぎて頭が混乱!普通の女子高生がなんでビジュアル系のバンド組まなきゃなんないの!新手のナンパ?もうわけわかんない?!

「へぇー、おもしろそうじゃん!やれば?ハル。オレマネージャーしてあげるからさ。」

何をいってるんだ慶ちゃんは・・・。人事だと思ってー。
遼はなんて断ったらいいか考えていた。普通に考えて断るに決まっている。

「あたし・・・別にバンドとか興味ないし、それに人前で歌うとか全然向いてないと思うし、・・・。」
「ちょっとまて、ゴメン、話が急すぎたよね、実はねCDデビューできることになってるんだ。」
「え?」

遼は黒髪青年の話に自分の耳を疑った。

「一曲だけだけどとりあえず発売が決まってるから早くメンバー集めたいんだよね。その曲が世の中に受け入れられれば芸能人ってわけ。どう?わるくないでしょ?オレ、ギターの笹山彰(ささやまあきら)、こっちはドラムの木下光一郎(きのしたこういちろう)。二人とも二十歳の大学生。怪しいもんじゃないよ。」
「・・・?メンバーもいないのにデビュー決まってるんですか?」

遼も女の子、「芸能界」の言葉につい反応してしまう。


「実は光一郎の親父がプロダクションの社長でそのコネで。」
「プロダクション・・・。」

笹山の話に慶介は興味深々である。

「そう、親父が誕生日に一曲出してくれることになったワケ。」

木下が話しに割り込む。

「そんで、ベースは?バンドていったら、ギターとドラムとボーカルとベースですよね?」

慶介の問いに二人は再び顔を見合す。
「今交渉途中で・・・。」

  ・・・・・

「遼!遼!はーるーかー!!」
「何よ?麻美子、こんな朝っぱらから。」
「まみちゃーん!!まってよー!」
「もう、菜々トロイ!!」
「はぁ、はぁ、・・・。はるちゃん、おはよ~。」
「おはよ奈々、平気?」

毎朝、学校に入る頃遼の後ろから飛びついてくるこの二人組みクラスメートの時田麻美子(ときたまみこ)と大滝菜々(おおたきなな)である。

「遼!あのね、今度新しくできたタレント養成所でオーディションあるんだってー!!」
「そう!そう!」
「それで?」

・・・なんかやな予感・・・。

「それでって・・・、でようよ!」
「・・・、な~にいってんの。無理に決まってんじゃん。」
「そんなことないよ~。はるちゃんなら絶対平気だもん。」

菜々が自信満々にいう。菜々は遼のことをすごく慕っていてすごく立てたがるクセがあるのだ。

「おい!菜々、3人ででるのよ?3人で。あんたもでるの。」
「えっ??無理無理!!」

遼は二人の話を聞きながら自分が日直だったことを思い出した。

「そんなにでたいなら二人ででなよ。あんたら二人なら絶対受かるって。応援するからさ。あたしは職員室いってくるから先いってて。」

そういって遼は二人をおいて行ってしまった。

「遼のやつ、実はあたしらより全然もてるくせに・・・。」
「ねぇ~?気づいてないだけなんだよね~。すっごい美人だもん。」
「よし!奈々、うちらで遼に自信つけさせてあげよう!!」
「へ??」
「遼には内緒よ?きっといやがるからね。」

そういって目を輝かせた麻美子の手にはオーディションの広告が握り締められている。

「絶対合格してやるんだから!!」

           vol.2へどうぞ。


© Rakuten Group, Inc.
X